コンサートの目玉は、私たちの指揮者の就任10年目を祝って作曲を委託したフルート曲。
"Breathless" というタイトルです。
今回が世界初演 (world premiere) でしたので、ラジオなどでも盛んに宣伝していた様子です。
ジュリアード音楽院の教授でもあり、アカデミー賞にノミネートされたこともあるフルートの巨匠 Carol Wincenc さんを、ソリストとしてニューヨークからお招きしました。
3年前にも共演したことがある方です。
作曲をお願いしたのは、ボストン在住の Tod Machover さん。
マサチューセッツ州ケンブリッジの MIT メデイアラボで、音楽とメディアの教授をなさっています。
数々の栄えある賞にも輝き、革新的な音楽技術を紹介してヨー・ヨー・マやプリンスの新生面を開いたことでも知られている、才能豊かな方だそう。
ところが、この楽譜がなかなか出来上がらず、ようやく私たちが受け取ったのは10月半ば。
ハラハラドキドキのスタートでした。 ;(;゚∇゚)/
さっそく練習を開始しようと楽譜を見ると、典型的な現代音楽 contemporary music で、調性がなく、拍も摩訶不思議なもの。
4/4、3/4、2/4拍子はお馴染みですが、ところどころにいきなり3/8、5/8拍子が入ります。
これはまあOKとしても、7/16 (1小節の中に16分音符が7つ分) や11/16などという未経験の拍子がランダムに挿入されているのを見ると、一体どういうこと?と頭をかきむしりたくなります
こういう部分って、どうやって指揮するんだろう。。。
自分のパートだけを見ても、全体像はさっぱりつかめません。
何しろ世界初演ですから、 YouTube などに載っているわけもなく、拍が不規則なのでメトロノームも全く役に立ちません。
個人個人がひたすら集中し、頭の中でよ~~く数えながら演奏して慣れるしか方法がありませんでした。
「11/16は、3/4拍子マイナス16分音符ひとつ分ってこと?」 というように、数学的頭脳も必要になってきます。
ただでさえリハーサル日数が少ないのに、先々週は指揮者が体調を崩してキャンセルになってしまいました。
この曲を初めてみんなで合わせたのは、何と本番5日前! 綱渡り状態の危うさです。
そして本番前日のリハーサル、今度はコンサートマスターが体調不良で欠席でした。
ヴァイオリンのソロパートもあるので、もし彼女が出られなかったら大変です。
その日は私のパートナーも片頭痛に苦しんでいたし、私も風邪っぽくてぼうっとしていました。
おまけに雪まで降り出して、何だか呪われているみたいな???
本番の昨日は、道路が凍っていてツルツルでした。
車の運転も、歩道を歩くのも、みんなソロソロとです。 コンサート直前に怪我でもしたら大変ですもの!
不安要素の多いコンサートでしたが、指揮者もコンサートマスターも気力で体調不良を乗り切りました。
指揮者、ソリスト、団員が最大の集中力を発揮して気持ちを合わせ、超難解な現代音楽を見事にまとめることができたと思います♪
フルートのキャロルさんは、ふくよかな音、切れ味の良い音から、尺八に独特の 「ムラ息」 のような音まで、様々な色合いを自由自在に表現できる魔術師です。
さすが一流のソリスト!の演奏でした。
バックに一緒に流れた電子音パートにも、尺八の音が入っていて、ちょっと武満徹チックな世界。
ホラー映画のBGMっぽくもあります。 お客様はどう感じたのかな??
こういった斬新な現代音楽が好きか?と聞かれたら、う~ん・・・と考えてしまいます。
演奏していても、楽しいというよりは、楽譜どおりにこなせたぜ~ぃ!という自己満足感のほうが大きかったかな。
次の展開が全く見えず、演奏する私たちも、聴いているお客様も、一体どこに連れて行かれるのだろうと不安な気持ちになるタイプの音楽です。
こういうのを作曲する人の頭の中って、どうなっているのかしら。 ヽ(~~~ )ノ ?
今回のコンサート前半で演奏したベートーヴェンの 「エグモント序曲」 、チャイコフスキーのバレー組曲 「くるみ割り人形」 とは、何もかもが正反対。
これらは典型的な古典で、お約束に則って作られていますから、こう来たら、次はああだろう・・・と予想がつきますし、メロディーを歌うこともできて、とても安心感があるのです。
クラシック音楽の古めかしい規則に縛られた 「枠」 を取り払ってしまうことが、現代音楽の出発点でした。
確かにマーラーあたりで、交響曲にも全ての要素が出尽くしてしまった感じで、人々が何か新しいものを求めたのは当然だったのかもしれません。
でも正直言って、ちょっと違う方向に行きすぎてしまったのでは?という気がします。
現代音楽は、聴いていても何調なのか何拍子なのかがわからないし、楽譜を見ても頭の中でその音を鳴らしてみることが困難です。
この 「先行きのわからなさ」 こそが、現代音楽の醍醐味なのでしょうが、そこに 「美」 を見い出すことができるのは、かなりの通か、かなりのひねくれ者? (おっと、失礼・・・)
とても斬新な試みであることは認めるし、クラシック音楽の伝統的な 「型」 をすっかり壊してしまった点では大成功なのでしょう。
けれども、このジャンルの音楽って、これから一体どこに向かっていくのでしょうね。
ますます、一般人にはついていけない世界に行ってしまうのでしょうか。
「現代」 はすぐに 「現代」 ではなくなってしまうしね~
音楽の三要素 「メロディー」 「リズム」 「ハーモニー」 をことごとく無視し、わざと難解に無秩序に作っているのでは?と疑ってしまう現代音楽。
ひたすら不協和音の連続で、気持ち良くはなれない・・・偏屈で気難しいおっさんみたいで、仲良くするのはむずかしいなあ。
長所をあげるとすれば、同じ時代を生きている人が作った曲を、一緒にその場で作り上げていけるという点なのかな? (今回も、作曲者自らがリハーサルに立ち会い、かなり変更がありました・・・)
それに、いつもの5倍位は集中して演奏することになるので、ボケ防止にも大きな効果があるに違いありません。
集中しすぎて、何だかやたらと疲れましたけれどね。
チャイコフスキーの 「くるみ割り人形」 に、とてもほっとしたコンサートでした。(多分、聴いていたお客様も・・・?)
特に最後の 「花のワルツ」 の優雅なハープソロなんて、うっとりと聴き惚れてしまいます。
ハープは、見た目も非常に美しい楽器です ❤
やっぱり、古臭いと言われても、典型的なクラシック音楽が一番好きだな~♪
昨日演奏した Breathless には、初期の宇宙の混沌と、そこに射しこんでくる光みたいな、哲学的なものも感じました。 イメージが自由に膨らんでいく曲であることは確かです。
何だかんだと否定的なことも書いてしまいましたが、現代音楽にすっかり背を向けてしまわずに、これからも少しずつお付き合いを続けてみるつもりです。
いつの日か、思い切りハマってしまうかも!?
★11月9日のコンサートのプログラム★
Overture to Egmont Op. 84 エグモント序曲 (Ludwig van Beethoven)
The Nutcracker suite Op. 71a バレエ音楽 「くるみ割り人形」 (Peter Ilyich Tchaikovsky)
Miniature Overture 小序曲
March 行進曲
Dance of the Sugar Plum Fairy 金平糖の精の踊り
Russian Dance (Trepak) ロシアの踊り (トレパック)
Arabian Dance アラビアの踊り
Chinese Dance 中国の踊り
Dance of the Reed Flutes 葦笛の踊り
Waltz of the Flowers 花のワルツ
INTERMISSION
Breathless (Tod Machover)
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こんにちは。
返信削除もう寒くて寒くて、、外の気温は−15度です。もしかしたらそちらの方が暖かかな?
コロラドの気温は本当に極端で大変。
sakuraさんは音楽で精神統一してるんですね。。夢中になれるものがあり生き甲斐がある。。そんな生活が伝わってきます。。。♪
早くもナットクラッカーのシーズン到来〜!忙しくなる季節ですが、お互いがんばりましょう。そちらノボードゲーム私も試してみます。
ねこちゃんさん、
削除こちらも今週はずっと同じような気温ですよ。
雪も積もり、すっかり銀世界になってしまいました。
枯葉をきれに吹き飛ばしてもらっておいて、本当によかったわ~
コンサートが終わってから、どっと疲れが出てしまった感じです。。。
久しぶりの雪道の運転も、神経を使いますしね。
すぐにサンクスギビング、そしてクリスマスもやってきますので、
もうひと頑張りすることにしましょう。
こんにちは
返信削除私には音楽の才能はないので、Sakuraさんやオーケストラの皆さんの
クラッシク音楽の世界を見せて、聴かせていただくのが嬉しいです。
能書きだけは、おまかせくださいませ。笑
私の住んでいる大学の町もこれからは、ホリデーのコンサートや
バレーや劇で大忙しになりますね。風邪などひかれませんように!
いつも暖かいコメントと応援ありがとうございます。
みどりさん、
削除実はもう、久しぶりに風邪をひいてしまいました。。。
難曲と悪路の運転で、ストレス溜まったかな?
お仕事に打ち込んでいらっしゃるみどりさんに比べたら、
本当に甘い生活でお恥ずかしいのですが・・・
芸術の秋が終わっても、引き続き芸術の冬でしょうか?
年末にかけて色々な催しがあって楽しみですね。
みどりさんも体調にはくれぐれも気をつけてください♪