含み笑いで質問してくるのはなぜ? と思ったら、日本で外国人に 「納豆を食べたことがあるか」 と聞くのと同じような意味合いらしい。。。
慣れない人にとっては 「臭い」、「不味い」、「見た目も怪しい」 と、3拍子揃っているようです。
発祥はノルウェーだともスウェーデンだとも言われる伝統的な魚料理で、スカンジナビア系の人々が多いミネソタでは、家庭や教会などで代々伝わっているそう。
ルタフィスク lutefisk は lyefish という意味なのですって。
乾燥させた白身魚 (普通はタラ) を、ライ lye に数日間浸すことで、独特の食感が生まれるからです。
ライというのは、劇薬である水酸化ナトリウム (苛性ソーダ) のことですよ~!!
石鹸を作る時に必要なもので、排水管クリーナーなどにも使われます。
理科の実験で、「葉っぱを水酸化ナトリウムに浸すと葉肉が溶けてしまい、葉脈だけが残る」 というのもあったな。
素手では触れないし、アルミや銀の器具を使うと変色したり腐食してしまうそう。
親戚の Terra が本場のドイツ式プレッツェルを手作りした時、「ライを使うので危ないから、子供を数時間預かってくれる?」 と頼んできたっけ。
(焼く前に、プレッツェル生地をライ溶液に一瞬漬けると、こんがりおいしそうな茶色に焼け、食感もよくなるそう。)
そんな恐ろしいものを食べて、内臓が溶けたり石鹸状になったりはしないのか・・・?
前回の記事で取り上げたシラントロ (香菜) と同様、大好きか大嫌いか、極端に分かれるようです。
強烈な臭さは、「汚れたまましばらく放置された靴下のようだ」 と表現した友人がいます。 げげっ!
白くてぶよぶよしていて、食感も気持ち悪いのですって。
大嫌いな人のほうが、断然多い感じ。 でもそんなことを聞かされると、よけいに気になるじゃないの。
ですから、友人夫婦がルーテル教会主催のディナーで、典型的なスカンジナビア料理が食べられるよと誘ってくれた時、飛びついてしまいました! (今回も、怖いもの見たさです。)
外側は割と地味だけれど、中に入るととても美しい教会♪
一緒に行った友人は、入った途端に 「うっ、臭いが・・・」 とさっそく悶えていましたが (笑)、私にはそれほどひどい悪臭には感じませんでした。
入り口でいただいた番号札順に呼ばれるのを、しばらく待ちます。
偶然、オーケストラの友人にばったり会いました。
生まれて初めてルタフィスクを食べに来たと話したら、「ここの教会のが、町で一番おいしいよ!」 ですって。
魚の種類や調理法によっても、臭さや食感がだいぶ違うらしい。
順番が来ると、カフェテリアに移動です。 ドキドキ・・・
「ルタフィスクが無理だったら、ミートボールがあるからね」 と友人が励まして (?) くれたので、すきっ腹を抱えたまま帰る心配はなさそうです。
着席すると、教会員が食べ物と飲み物をてきぱきと配ってくださいました。
ルタフィスク、北欧風ミートボール、レフサ、茹でたポテト、スウェーデンカブとも呼ばれるルタバガ rutabaga をマッシュしたもの、コールスロー、クランベリー・・・というのは、典型的なメニューだそう。
Rutabaga の英語の発音は、ルータベイガ、ルータバガ、ルータベギと色々あるようです。
この辺では、最後の 「ルータベギ」 が多いみたい。 地域によって違うのかな?
下の画像は、他サイトからお借りしたものですが、メニューは笑っちゃうほど見事に一致しています。
そして、これがウワサのルタフィスク!!!
本当に魚というよりゼリーみたいな感じですが、それほど怪しいものには見えないけど・・・?
においだって、普通のタラと変わらないと思いました。
私が日本で慣れていたからで、こちらの人にとっては生臭いのかしら。 または私の嗅覚が鈍いのでしょうか。
恐る恐るちょこっとだけ取り分けて、たっぷりの溶かしバターを上からかけ、塩・こしょうをパラパラ。
どんな反応を示すのだろうかと、皆さんの視線が一斉に私に集まります。
日本で納豆を初めて食べる外国人も、こんな感じで注目されてしまいますよね。
もっととんでもないゲテモノを期待していたのですが、普通に喉を通りました!
(皆さん、ちょっとがっかりしたりして・・・)
初めての不思議な食感だし、すご~くおいしいというわけではないけれど、大丈夫。
確認のために、おかわりしてしまったほど。
お醤油を少したらしたら、もっと美味なような気がする。。。 怒られるかしら。
今回一緒に行ったお仲間、実はみんなルタフィスクは苦手で、ミートボール目当てだったのですって。
北欧ルーツの友人さえ、1年に大さじ1杯分ぐらい、お義理程度に食べれば十分だそう。
全く手を出さなかった人もいました。
夫は、子供の頃に我慢して食べて以来、とても久しぶりに口にしたそう。
やはり、記憶の中の味よりはずっとマシだった・・・との感想でした。
でも同じテーブルで食事した見知らぬおじ様2名は、私たちが少ししか食べなかったのを確認した後、残りを二人で山盛りに取り分けて、パクパクおいしそうに召し上がっていました。
ミネソタには、「ルタフィスク追っかけ隊」 も大勢存在し、新聞やネットでスケジュールを調べ、長時間車を飛ばしてでも、あちこちの教会ディナーに出没するそうです。
「来年は、あなたもそれに混ざっているかもね!」 と、からかわれてしまいました。
でも正直のところ、デザートのアップルパイとコーヒーが、一番おいしかった。 (;^◇^;)ゝ
昔ノルウェーからアメリカに移住した人の半数は、ルタフィスクのおいしさを伝え広めるため で、残りの半数は ルタフィスクから逃げ出すため だった・・・というジョークもあるそう。
残念ながら本国では、ルタフィスクはもうそれほど食されていないようです。
以前、友人たちとオーロラ観測のためにノルウェーに行った時にも、話題に上った記憶がありません。
移民としてスカンジナビアからアメリカにやって来た人々の子孫たちが、ご先祖様に敬意を表し、自分のルーツを改めて確認するために、感謝祭やクリスマスのディナーの一品としていただくそうです。
愛好者たちはターキーの代わりにたくさん食べるので、今はアメリカでの需要のほうが多いほどだそう。
ルタフィスクの発祥とされる話の1つは、こんなものです。
ノルウェーではたくさん捕れたタラを保存するため、冬季に外に設置した木製ラックに干す習慣がありました。
ある時バイキングが漁村を襲い、家も庭もみんな焼いてしまったそう。
逃げ出していた村人たちは間もなく戻ってきて、水をかけて火を消しました。
それから雨も降ったため、干してあったタラは、木製ラックの灰が混ざったぬかるみに覆われたまま、しばらく放置されていたのです。
その後、村人たちはびっくり・・・干しダラは、見た目が新鮮な魚のように変化していたではありませんか!
彼らはタラを丁寧に洗って灰を落とし、それを茹でておいしくいただきましたとさ。
灰汁も英語では lye でアルカリ性であるため、昔、家庭でルタフィスクを作る時には、木 (特に白樺) を燃やした灰を使っていたようです。
思い出してみると、私も今までに色々と 「恐ろしい食べ物&飲み物」 を体験してきました 。
北京で食べたサソリ、アリゾナで食べたヘビ、おみやげでもらったバリ島のコピ・ルアク (うんちコーヒー)、今回のルタフィスク・・・
みんな、あっさりクリアしてしまったな (汗;)
次はいよいよ、世界で一番臭いと言われているスウェーデンのシュールストレミングかしら?
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