2019/04/29

世界に渦巻く暴力に対する音楽の力とは

今シーズン最後のコンサートが、大入り満員の大盛況で終わりました。
今回は合唱団とのジョイントで、"This Will Be Our Reply" というテーマでした。

前半は「チチェスター詩篇 Chichester Psalmsです。
この曲は、イギリスのウエスト・サセックス州にあるチチェスター大聖堂からの依頼を受けたレナード・バーンスタイン Leonard Bernstein が、1965年に開催された音楽フェスティバルのために作曲したものです。

バーンスタインの代表作「ウエストサイド物語」に登場する「アメリカ」などを思い出させるような独特のリズムや、「マリア」「トゥナイト」的な美しいメロディーも登場。
色々な要素がぎゅっと詰まった、大変印象深い仕上がりです。

下の動画では、バーンスタイン自らが熱を込めて指揮棒を振っています。
合唱団の男の子たちが可愛いですね!
きっと普段はやんちゃ坊主なのでしょうが、きちんと髪を撫でつけてもらって、かしこまった表情です。


第2楽章のボーイソプラノの子も、今はもうおじいちゃんかな?
音楽の道に進んだのかしら・・・どんな人生を送っているのかなと気になります。

私たちのコンサートでは、ボーイソプラノのソロは、コンサートマスターの息子さんが務めました。
ハープだけの伴奏によって始まる大変美しいメロディーで、神への絶対的な信頼を表します。

 主はわたしの牧者であって、わたしには乏しいことがない。
 主はわたしを緑の牧場に伏させ、いこいのみぎわに伴われる。
 主はわたしの魂をいきかえらせ、み名のためにわたしを正しい道に導かれる。
 たといわたしは死の陰の谷を歩むとも、わざわいを恐れません。
 (詩篇第23篇1-4 日本聖書協会)

途中で野蛮な感じのする男声にさえぎられるものの、後半にまた同じメロディーが続きます。

ボーイソプラノの子はいつ声変わりしてもおかしくない年頃ですが、途中で声が裏返ったりすることなく無事に、天使のようなソプラノを聴かせてくれました♪
みんなの祈りが、神様に通じたかな?

第3楽章後半は、10/4拍子という変則的なリズムで、魂の安らかさ、兄弟が仲睦まじく共に暮らすことの麗しさを歌いあげます。
歌は全てヘブライ語・・・どことなく日本語と共通した響きに懐かしさを感じたのが不思議!


そしてコンサート第2部は、この「チチェスター詩篇」の流れを受けたものです。

1963年にジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された2日後、ケネディを崇拝していたバーンスタインは "An Artist's Response to Violence" として知られるスピーチを行いました。

彼はそこで、「この悲劇に直面しても、音楽家はその能力を最大限に生かし、今まで以上に強く激しく、より美しく、真心をこめて演奏しよう。暴力に対する私たちの応答は(さらなる暴力ではなく)音楽が生み出すこういった力だ」と述べました。

このスピーチに感銘を受けて新しい曲のインスピレーションを得たのが、作曲家で指揮者でもある Lucas Richman 氏でした。
バーンスタイン生誕100年にあたる昨年2018年、Richman 氏がバーンスタインオフィスの許可を得て ”This will be our reply" というタイトルで作った曲を、幸運にも私たちが演奏させていただけることになったのです。

 作曲家 Lucas Richman 氏のサイトより

世界初演は、今年3月30日にテネシー州のオークリッジで行われたばかり。
私たちは2番手です。


作曲した Richman 氏のこの曲への思い入れは相当なもので、メイン州からはるばる私たちの田舎町まで指導に来てくださいました。
コンサート本番ではお客様へのスピーチがあり、その前に3日間連続でお付き合いくださったリハーサルでのアドバイスも、大変丁寧で細やかなものでした。

第一楽章では、残虐な暴力が渦巻くこの世でも、真の美しさは決してそれに負けない、壊されない・・・というメッセージを、混とんとした不協和音の中から幾度も蘇る、喜びに満ちた弦楽器の旋律が訴えるかのようです。

第二楽章は一貫してスピリチュアルな趣で、魂の奥底のピュアな部分を目覚めさせてくれるような感じがします。
そのまま第三楽章に続き合唱が入りますが、楽譜のページをめくるのもしばらく待つように、そしてごく静かにめくるようにとの指示・・・

この曲も「チチェスター詩篇」同様、ヘブライ語の歌詞です。

 暴力に直面して、私たちには何ができるのだろうか。
 家族や友人たち、コミュニティ、国家、地球のために。
 知識、喜び、愛、平和のために。
 私たちの魂、未来のために。
 この世界を修復し、癒すことが、私たちの務めだ。

ハミングから静かに厳かに始まる合唱団の歌声は、高らかで力強く愛に溢れたエンディングへと向かいます。
ステージ後方から響く歌声に、最後は思わずウルウルとしてしまいました。

割れんばかりの拍手とスタンディングオベーションで、オーケストラ創立80周年の節目である今シーズンのコンサートは、大成功に終わったのです。

実際に演奏して全身で音に浸りながら、あの場に我が身を置けたことを本当に幸せに思います。
「音」そのものは見ることも触ることもできないけれど、音楽はとてつもない力を持っていることは確かです。
その力を信じて、これからも自分にできることをコツコツ続けていくことにしましょう♪


♪4月28日 コンサートのプログラム♪

     Chichester Psalms チチェスター詩篇 (Leonard Bernstein)
       Ⅰ. Psalm 108:3 Maestoso ma energico
         Psalm 100 Allegro Molto
       Ⅱ. Psalm 23:1-4 Andante con moto, ma tranquillo
          Psalm 2:1-4 Allegro feroce
          Psalm 23 (continued) 5-6 Meno, andante con moto, ma tranquillo
       Ⅲ. Psalm 131 Peacefully flowing
          Psalm 133:1

           Intermission

     Symphony: This Will Be Our Reply (Lucas Richman)
       Ⅰ. Intensity
       Ⅱ. Beauty
       Ⅲ. Devotion
    

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2019/04/20

そこら中がぐちゃぐちゃ・・・

先週の大雪がウソのように今週は暖かくて雨も降り、が一気に解けつつあります。
庭や湖に集まるの種類も増えてきました。


Mallard(マガモ) seagull(カモメ)が、一緒にくつろいでいます。
湖のまだ凍っている部分も日増しに濃い色になってきて、もうすぐ全部解けそうな気配!

水鳥の他、American robin(コマツグミ)red-winged blackbird(ハゴロモガラス)northern flicker(ハシボソキツツキ)などの春を告げる鳥も戻ってきました。


先週肋骨を骨折した夫は、気を付けてソロソロとゆっくり動いていますが、運転など日常の動作はほとんど大丈夫になりました。
痛みは残っているものの、家に閉じこもる必要はなくなって、私もほっとしています。

でも大雨の後、舗装していないドライブウェイはさらに大変な様子に!


雪が深く積もった時もそうですが、今の時期も4WD(四輪駆動)でないとここを通るのは絶対無理・・・
たとえ四駆を持っていても、大抵の方は自分の車がドロドロに汚れるのは嫌ですから、今の季節はお客さんがほとんど来ません(笑)

私たちはまあ慣れているので、荒馬を乗りこなすような気持ちで何とか通行していますが。
「今日も頑張れ~」と車に声をかけて、ずっと応援しながらの運転です(汗;)
これが1kmほど続き、神経使う。。。無事に通れた後には、お礼の言葉も忘れないようにします。


UPSFedEx など宅配便の大きなトラックにも嫌がられるため(そりゃそうだ)、ネットショッピングもしばらくお休み・・・
どうしてもという時は、サービスセンターや指定の店まで、こちらから受け取りに行かなくてはなりません。


雪がやたらと多かった今年は、林の中も水浸しになっている所が多いです。
でも雪解け水があちこちで川のようにゴボゴボと流れる音には、とても癒されます♪
今の季節だけのお楽しみですから、う~んと味わっておくことにしましょう。


ミネソタの春・・・花いっぱいの日本の春とは違って、どこもかしこも茶色。。。


草木が豊かな緑色となり、の咲き乱れる季節はもう少し先です。


明日はいよいよイースター
今年は夫の怪我と私道の状態を考慮し、こちらからお招きすることはやめ、ご招待もお断りして、地味に家で過ごすことにしました。
それはそれでゆっくり過ごせて、きっと良き日になることでしょう。



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2019/04/14

肋骨が4本も折れた!

怪我をしたのは、私ではなく夫です。
正直のところ、それだけで済んで本当にラッキーだった・・・という状況でした。
最悪の場合即死か、重い後遺症が残っていたかもしれません。

例年通り、夫と友人たちがメープルの樹液を採取して、メープルシロップを作る現場で起こったアクシデントでした。

ざっと説明すると・・・

メープルの樹液を煮詰めてシロップにするには、大量のが必要です。
そして煮詰める時の火の番のお供には、たくさんのビールも必要(笑)
下は3年前の写真です。


その日も夫は友人と共に、薪にするための木を切っていたそうです。(もちろん、飲み始める前に)
木を切るにはいつも細心の注意を払い、どこに倒れるか予測しながらなのですが・・・
今回は、倒れてくる木の枝の一部が、離れた場所にあった枯れ木にたまたまぶつかったそう。

その枯れ木が予想もしなかった角度で倒れてきて、夫はとっさに逃げてもろに下敷きになることは免れたものの、衝撃で地面に叩きつけられて怪我をしたのだそうです。

一緒にいた友人がすぐに病院に運んでくれ、後頭部に受けた傷もすぐに処置してもらいました。
(後で恐る恐る見たら、パカッと開いたらしい傷口をホッチキス stapler の針で留めてあった!
 麻酔もしなかったそう。医療用なのでしょうが、普通のとほぼ同じ形で冗談みたいです。)

CATスキャンの結果、脳にも内蔵にも異常がなくてひと安心。。。
肋骨の骨折は、基本的に自然治癒を待つしかないようですので、しばらく家で静かにしていなければなりません。

痛み止めの薬は飲んでいても、急に動いた時はもちろん、咳やくしゃみで激痛が走るそう。
あまり笑わせないように注意するよう、ドクターに言われました。
笑い上戸の傾向がある夫にとっては、これが一番難しいかもよ。


家に引きこもるには絶好の(?)天気で、先週は木、金と大雪が降って冬景色に逆戻り!
あまり動けない夫に代わって、私が雪かきしました。
真冬のサラサラの粉雪と違い、湿った重たい雪と格闘していると汗ばむほど。
結構良い運動になります。


風も強かったため、ドライブウェイは吹き溜まりで運転は無理そうな様子。
吹雪となった先週木曜日は、視界も最悪!たくさんの事故があったようです。
4月のコンサートに向けての弦楽器だけの練習は、キャンセルとなってほっとしました。

幸い食料はたっぷりありますから、雪が解けるまで4、5日は買物に出かけなくても大丈夫そう。
皆さんご親切に買物や雪かきをオファーくださるものの、今のところ何とかやっています。
家にあるものだけを工夫して料理するには、絶好のチャンスよ♪


晴天となった昨日は、湖が一部やっと解け始めた所に集まってくる鳥たちを眺めていました。
つがいのナキハクチョウと、オウギアイサ Hooded Merganser というカモです。


カナダグースの賑やかな鳴き声も、真冬には聞けなかったので懐かしい!
私が行ったら飛んで行ってしまったけれど、猛禽類の白頭鷲も数多く見かけます。
悠々と空高く舞う姿、ほれぼれと見とれてしまうわ~

雪が降る前に我が家の庭に来た珍客は、野生の七面鳥 wild turkey です!
もう8年近くここで暮らしていますが、初めて目にしました。


ワイルドターキーと言えば、バーボンの人気銘柄のひとつですね。
スコッチなどと違ってとうもろこしが主原料のバーボンは、好き嫌いがはっきり分かれるところですけれど、私たち夫婦は大好きです。


夫の頭の傷に処置されたホッチキス針は、水曜日に除去だそう。痛そうだな。
傷を消毒するようにも言われなかったし、シャワーも怪我した当日からOKでした。
全てが大雑把なアメリカだからなのでしょうか。。。

さて、1週間後はいよいよイースター!(今年はずい分遅い)
それまでには、夫もドライブウェイも、もう少し良い状態になっていますように。

人生、いつどこで何が起こるかわかりません。
特別なこともなく終わるいつもの平凡な1日が、実は一番幸せなのだと実感・・・
もっともっと、感謝しなくてはね♪


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2019/04/08

アメリカ料理に飽きた胃と目に、タパスが嬉しい

親戚の誕生日祝いと早めのイースターを兼ねて、夕食に招待されました。
このお宅では、目先の変わった素晴らしく美味しいお食事が振舞われることがわかっているので、私たち夫婦はいそいそと出かけたのです。 (#^.^#)

誕生日を迎えるご本人の Terra が、3日がかりで用意してくれたのは・・・
スペイン料理の定番タパス Tapas で、たくさんの種類の料理が並びました♪♪♪
タパスは少しずつ各自の皿に盛りつけて、お酒のおつまみにぴったり!

レストランでいただく典型的アメリカ料理ですと、初めの数口は美味しく感じても、段々飽きてきてしまいます。
(贅沢だけれど、大皿で供されるどこでも似たようなメニューに、がっかりすることが多い)

日本では、居酒屋などでちょこちょこと少しずつ数品をオーダーするのが好きだった私たち夫婦にとって、タパスのように数々の料理が並ぶ風景はまるで天国!
スペインの居酒屋は、バルまたはバール bar と呼ばれています。日本人の発想と似ているのが嬉しい。

少女漫画の登場人物みたいに、私の瞳には星がキラキラ光っていたに違いありません。☆彡☆彡
ガーリックの香りも、食欲を大いに刺激します。


手前の二品は、スパイシーなチョリソー chorizo と、数年前から話題になっているスーヴィード  sous vide(家庭用真空低温調理器)で作ったビーフです。


パン(サワードウ)も、手作りの焼き立て。
オーブンから出すと、パチパチと「天使のささやき(または拍手)」が聞こえました。

下の写真左上のセビチェ ceviche は、中南米で好まれている魚介類と野菜のマリネです。


おなじみの定番タパスである、エビのアヒージョ ajillo など。
旨味の溶け出したニンニク風味たっぷりのオイルも、サワードウにしみ込ませていただきました。


エンドウ豆のペーストは、風味豊かで夢心地となる舌ざわり・・・


これらのご馳走は、ご主人が最近完成させたばかりの手作りキッチンアイランドに、ずらりと並びました。


多くのスパイスや調理器具、製菓用品、まな板や細々としたものまですっきりと収まります。
今まで冷蔵庫の上で使いにくそうだった電子レンジもここへ・・・
キッチンエイドのスタンドミキサーは、使う時だけカウンターと同じ高さにせり出してきます。

構想を練り始めてから完成まで、3年がかりだったそう!
仕事と育児の合間にコツコツと作業を続ける様子を時々見せてもらっていたので、私たちも出来上がりを楽しみにしていました。
奥さんへの愛情がたっぷり詰まった、最高のプレゼントですね。

ラズベリーのクリームとクランチの層が、バターの代わりにオリーブオイルを使ったふわふわのケーキに挟まって、見た目も素晴らしいデザート♪


「食」に対してあまりこだわりがなく、お腹を満たせば良いと思っているアメリカ人も多いですが、Terra のようなその正反対の方々も、インスタグラムなどのSNSを賑わせています。

料理は私の大切な hobby だから・・・と自分も楽しみながら、家族や来客のためにいつも心を込めて素敵なテーブルを用意してくれる彼女に、心からの感謝と拍手を送ります。


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