その中のひとつが、イギリスの作曲家グスターヴ・ホルスト Gustav Holst (1874-1934) の組曲「惑星 The Planets」です。
「金星」と「木星」の2曲を演奏します。
組曲を通して演奏するには、女声コーラスや特殊な楽器が色々と必要で、今回は無理とのこと。
でも、大好きな「惑星」の特にお気に入りの2曲なので、十分にうれしいです♪
「惑星」を初めて聴いたのは、1970年代に冨田勲さんがシンセサイザー版のアルバムをリリースした時でした。
シンセサイザーという魔法の楽器の可能性を最大限に生かした画期的なアレンジに、ガ~ンと強い衝撃!!
コーラスも、ロケット打ち上げの秒読みも、オルゴールの音も全部合成音!? すごすぎる!!
機械的な音のはずなのに、冨田さんの音にはなぜだか温かみを感じました。
ホルストの原曲を聴いたのは、それからしばらく経ってから。
冨田さんのレコードを聴き慣れていたので、パポピパ~みたいな無線通信音声やロケットの発射音などの幻聴が、どうも一緒に聞えてくるような気がして困りました。
「惑星」は7つの楽章でできていて、それぞれに惑星の名と副題がついています。
ただし、私たちが学校で習った「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」の順ではありません。
「地球」は含まれず、「火・金・水・木・土・天・海」という順に曲が進みます。
この順番については、諸説あるようです。
地球から距離が近い順なのだとか、木星を中心にまず太陽に向かい、それから太陽から遠ざかって・・・とか。
「惑星」が作曲された時、冥王星はまだ発見されていませんでした。
冥王星って、何年か前に惑星の仲間からはずされてしまったので、ちょうどよかったのかな。
惑星の名前、全部英語で言えますか?
英語名は、ギリシア・ローマ神話の神々にちなんでつけられています。
水星 Mercury(マーキュリー)
金星 Venus(ヴィーナス)
地球 Earth(アース)
火星 Mars(マーズ)
木星 Jupiter(ジュピター)
土星 Saturn(サターン)
天王星 Uranus(ユーラナス、ユレイナス)
海王星 Neptune(ネプチューン)
そして、惑星から矮惑星 dwarf planet に降格となってしまった冥王星は Pluto(プルートウ)です。
金星 Venus |
ホルストの「金星~平和をもたらすもの Venus, the Bringer of Peace」は、愛と美の神ヴィーナスにふさわしく、ひたすら美しいです。
けれども途中からいきなり、シャープが6つもつく嬰ヘ長調になってしまうので、うっとり酔いしれてはいられない!
女神の歌声のようなヴァイオリン&チェロのソロと合奏の対比、光が射してくるような転調、神々しくて洗練された雰囲気の曲。
テンポはゆっくりなので、まあ何とかなるでしょう。
木星 Jupiter |
「木星」の出だしは、ファーストヴァイオリンとセカンドヴァイオリンがそれぞれ2パートずつに分かれ、セカンドはファーストのちょうど1オクターブ下の音を奏でます。
それぞれラドレとミソラのくり返しだけなのに、スタートがずれているので音がとても複雑に絡み合い、宇宙の混沌を表しているような・・・
ホルストは音のマジシャンだという気がします。
この冒頭、わあ!これから何が始まるのだろう、と聴く人を引きつける効果があります。
でも弾いているうちに、どこが小節の頭かわからなくなってきちゃう。。。
「惑星」の全曲を知らなくても、「木星~歓喜をもたらすもの Jupiter, the Bringer of Jollity」の中間部の旋律だけなら、歌手 平原綾香さんのデビュー曲 Jupiter や、ダイアナ妃の葬儀の折に、耳にしたことのある方が多いはず。
弦楽器とホルンがユニゾンで奏でるあのメロディーは、壮大で厳かで、イギリスらしい格調の高さを匂わせ、なおかつ慈愛に満ちていて、とにかく胸にぐっときます。
スコットランド民謡が原曲である「蛍の光」に使われている音階にも似ているので、懐かしさを感じるのかな?
注:日本の唱歌や童謡などに多く使われる、ヨナ抜き音階のことです。
(その調の音階の4番目と7番目の音が抜ける)。
ただし「木星」の中間部分に4度の音(ラ♭)は登場しませんが、7度の音(レ)は使われています。
メロディーの音域が次第に高くなり、最後はフォルテッシモ!!
使われる楽器数も増えていき、盛り上がりの効果抜群です♪
その他の楽章については省略しますが、最初と最後についてだけ、少し触れておきますね。
火星 Mars |
「惑星」の最初は、勇ましくて「スターウォーズ」を連想させるような「火星~戦争をもたらすもの Mars, the Bringer of War」です。
タタタ・タン・タン・タタ・タンの5拍子のリズムがひたすらくり返され、めちゃかっこいい!
これもやりたかったなあ。
でもこの出だしの部分、コル・レーニョ col legno といって、弦楽器の弓の毛の部分ではなく棒の部分で叩く奏法なのです。
他の曲でやったことがありますが、弓も弦も傷んでしまいそうで怖い。。。
海王星 Neptune |
一番最後の「海王星~神秘なるもの Neptune the Mystic」の終わり方も独特です。
典型的な交響曲は、ジャン、ジャ~ンと派手に華々しく終わるのに対し、この組曲はまるで消え入るような終わり方。 宇宙空間にとけ込むように神秘的・・・
女声コーラスが入るのですが、ライブの時は舞台上には立たず、舞台裏で歌うのだそうです。
それでも一応ステージ衣装に身を包むのでしょうけれどね。 何だかお気の毒。。。
コーラスパートの最後の1小節に、リピート記号がついています。
ステージとの境のドアを少しずつ閉じていって、コーラスがフェイドアウトするのだとか。
冨田勲さんのシンセサイザー・バージョンでは、まるで無限の宇宙の果てに霞んで消えていってしまいそうな印象の女声コーラスの後に、静かなオルゴールであの「木星」のテーマが奏でられるというものでした。
「惑星」が大ヒットしてもその名声に甘んじることはなく、ホルストは教師としての仕事を続けました。
世間はこれを上回るような曲の登場を望んでいましたが、ご本人が本当に作りたかったのは、宗教音楽や自分の生徒たちが演奏できるような曲だったとか。
去年の3月のコンサートで私たちが演奏した「セントポール組曲」も、とても楽しかったっけ♪
ホルストとセントポール女学校の生徒たちのやり取りが、目に浮かぶような・・・
⇒ その時のブログ記事は こちら
世間での成功より、自分らしい生き方を貫いたホルスト、心から尊敬します。
「惑星」は危険です!ハマるとどんどんのめり込み、中毒になってしまう可能性大。
皆さん、お気をつけて・・・
音だけで宇宙旅行ができてしまうというのは、本当にすごいことだな~
無限の宇宙に思いをはせ、人生の意味や死後の世界のことにまで想像がふくらんでいく・・・深い、深~い曲なのです。
なお今回の記事の一部は、NHK・BS で放送されていた番組「名曲探偵アマデウス」の内容を参考にさせていただきました。
おまけ 「木星」 です♪ 例のメロディーは3分を過ぎたあたりから始まります。
全曲続けて聴きたい方は、こちらをどうぞ♪
古いですが・・・
ユージン・オーマンディ Eugene Ormandy の指揮。
ついでにこんなのも見つけてしまいました。
スコアがアニメになっている・・・すごい!!