今回は合唱団とのジョイントで、"This Will Be Our Reply" というテーマでした。
前半は「チチェスター詩篇 Chichester Psalms」です。
この曲は、イギリスのウエスト・サセックス州にあるチチェスター大聖堂からの依頼を受けたレナード・バーンスタイン Leonard Bernstein が、1965年に開催された音楽フェスティバルのために作曲したものです。
バーンスタインの代表作「ウエストサイド物語」に登場する「アメリカ」などを思い出させるような独特のリズムや、「マリア」「トゥナイト」的な美しいメロディーも登場。
色々な要素がぎゅっと詰まった、大変印象深い仕上がりです。
下の動画では、バーンスタイン自らが熱を込めて指揮棒を振っています。
合唱団の男の子たちが可愛いですね!
きっと普段はやんちゃ坊主なのでしょうが、きちんと髪を撫でつけてもらって、かしこまった表情です。
第2楽章のボーイソプラノの子も、今はもうおじいちゃんかな?
音楽の道に進んだのかしら・・・どんな人生を送っているのかなと気になります。
私たちのコンサートでは、ボーイソプラノのソロは、コンサートマスターの息子さんが務めました。
ハープだけの伴奏によって始まる大変美しいメロディーで、神への絶対的な信頼を表します。
主はわたしの牧者であって、わたしには乏しいことがない。
主はわたしを緑の牧場に伏させ、いこいのみぎわに伴われる。
主はわたしの魂をいきかえらせ、み名のためにわたしを正しい道に導かれる。
たといわたしは死の陰の谷を歩むとも、わざわいを恐れません。
(詩篇第23篇1-4 日本聖書協会)
途中で野蛮な感じのする男声にさえぎられるものの、後半にまた同じメロディーが続きます。
ボーイソプラノの子はいつ声変わりしてもおかしくない年頃ですが、途中で声が裏返ったりすることなく無事に、天使のようなソプラノを聴かせてくれました♪
みんなの祈りが、神様に通じたかな?
第3楽章後半は、10/4拍子という変則的なリズムで、魂の安らかさ、兄弟が仲睦まじく共に暮らすことの麗しさを歌いあげます。
歌は全てヘブライ語・・・どことなく日本語と共通した響きに懐かしさを感じたのが不思議!
そしてコンサート第2部は、この「チチェスター詩篇」の流れを受けたものです。
1963年にジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された2日後、ケネディを崇拝していたバーンスタインは "An Artist's Response to Violence" として知られるスピーチを行いました。
彼はそこで、「この悲劇に直面しても、音楽家はその能力を最大限に生かし、今まで以上に強く激しく、より美しく、真心をこめて演奏しよう。暴力に対する私たちの応答は(さらなる暴力ではなく)音楽が生み出すこういった力だ」と述べました。
このスピーチに感銘を受けて新しい曲のインスピレーションを得たのが、作曲家で指揮者でもある Lucas Richman 氏でした。
バーンスタイン生誕100年にあたる昨年2018年、Richman 氏がバーンスタインオフィスの許可を得て ”This will be our reply" というタイトルで作った曲を、幸運にも私たちが演奏させていただけることになったのです。
作曲家 Lucas Richman 氏のサイトより |
世界初演は、今年3月30日にテネシー州のオークリッジで行われたばかり。
私たちは2番手です。
作曲した Richman 氏のこの曲への思い入れは相当なもので、メイン州からはるばる私たちの田舎町まで指導に来てくださいました。
コンサート本番ではお客様へのスピーチがあり、その前に3日間連続でお付き合いくださったリハーサルでのアドバイスも、大変丁寧で細やかなものでした。
第一楽章では、残虐な暴力が渦巻くこの世でも、真の美しさは決してそれに負けない、壊されない・・・というメッセージを、混とんとした不協和音の中から幾度も蘇る、喜びに満ちた弦楽器の旋律が訴えるかのようです。
第二楽章は一貫してスピリチュアルな趣で、魂の奥底のピュアな部分を目覚めさせてくれるような感じがします。
そのまま第三楽章に続き合唱が入りますが、楽譜のページをめくるのもしばらく待つように、そしてごく静かにめくるようにとの指示・・・
この曲も「チチェスター詩篇」同様、ヘブライ語の歌詞です。
暴力に直面して、私たちには何ができるのだろうか。
家族や友人たち、コミュニティ、国家、地球のために。
知識、喜び、愛、平和のために。
私たちの魂、未来のために。
この世界を修復し、癒すことが、私たちの務めだ。
ハミングから静かに厳かに始まる合唱団の歌声は、高らかで力強く愛に溢れたエンディングへと向かいます。
ステージ後方から響く歌声に、最後は思わずウルウルとしてしまいました。
割れんばかりの拍手とスタンディングオベーションで、オーケストラ創立80周年の節目である今シーズンのコンサートは、大成功に終わったのです。
実際に演奏して全身で音に浸りながら、あの場に我が身を置けたことを本当に幸せに思います。
「音」そのものは見ることも触ることもできないけれど、音楽はとてつもない力を持っていることは確かです。
その力を信じて、これからも自分にできることをコツコツ続けていくことにしましょう♪
♪4月28日 コンサートのプログラム♪
Chichester Psalms チチェスター詩篇 (Leonard Bernstein)
Ⅰ. Psalm 108:3 Maestoso ma energico
Psalm 100 Allegro Molto
Ⅱ. Psalm 23:1-4 Andante con moto, ma tranquillo
Psalm 2:1-4 Allegro feroce
Psalm 23 (continued) 5-6 Meno, andante con moto, ma tranquillo
Ⅲ. Psalm 131 Peacefully flowing
Psalm 133:1
Intermission
Symphony: This Will Be Our Reply (Lucas Richman)
Ⅰ. Intensity
Ⅱ. Beauty
Ⅲ. Devotion
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