今年は2月末頃から気温が上がってきて、雪もすっかり解けてしまい、このまま春が来そうな気配だったのですが・・・
日曜から雪が降り始め、久しぶりに墨絵のような世界となりました。
まあ、例年のミネソタの3月は、こちらのほうが見慣れた景色なのですけれどね。
気温は-6℃位で、だいぶ解けてきた湖もまた凍ってしまうかも。
これも、今の時期はまだ全面凍っていることが多いので、驚きはしません。
数日前には、たくさんのカナダグースが湖に集まって遊んでいましたが、ちょっと早まったみたいね。
道路は凍ってツルツル・・・
運転に細心の注意を払わなくてはならず、暖かさと雪のなさに甘やかされていたミネソタンにとっては、「ちぇっ!」という感じです。
日曜はコンサート本番でしたが、前日のリハーサルの時に「天候があまりにひどかったらキャンセルの可能性もある」と言われていました。
隣りのノースダコタ州から手伝いに来てくれていた人たちもいて、帰路を心配してのことでした。
幸い、予報ほどには天候が悪化せずキャンセルは免れたものの、皆さんの安全のためにコンサートのプログラムを短縮することになってしまいました。
2月のコンサート終了後、直ちに練習を始めたチャイコフスキーの「交響曲第5番」は、残念ながら第1楽章と第4楽章のみを演奏することに・・・
うっとりするように甘美なホルンのソロで始まる、大好きな第2楽章がカットされてしまったのが、とても心残りです。
雪が降っていたので、早めに家を出ることにして、無事にコンサート会場に着きました。
こんな日なのでお客様は少ないだろうなと思いましたが、予想よりずっとたくさんの方々が聴きに来てくださって嬉しかったです。
今回の目玉は、元団員の Sadie Hamrin さんがソロを弾くショスタコーヴィチの「ヴァイオリン協奏曲第1番」。
私がこのオケに入団した13年前、「やたらと上手な小学生の団員がいる・・・!」と驚いたのですが、それが彼女でした。
ハイスクール在学中は陸上競技で活躍して、オケ活動は休んでいましたが、その後音大に進学。
5年前には、ヴィオラを弾くお姉さん(やはり元団員)と共に、コンサートで美しい姉妹デュエットを聴かせてくれました。
そしてすっかり大人っぽくなった彼女、今回は私たちとの共演のためにカナダから来てくれたのです。
現在は、修士号を取るために頑張っているそうです。
このショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番、全く知らなかったので YouTube で探して聴いてみたら、思わず絶句・・・
第1楽章の表題は「ノクターン(夜想曲)」。
ショパンのノクターンのようにうっとりするものを想像していたら、見事に裏切られた・・・
「なんじゃこれ?」という怪しい雰囲気で、まるで別の次元に引きずり込まれていきそう。
テンポの速い第2楽章は、「スケルツォ」らしい滑稽さも漂うものの、摩訶不思議な世界。
第3楽章ではやっとメロディーが追えるようになり、やたらと長くて迫力のあるヴァイオリン独奏のカデンツァ(5分近い!)に圧倒されます。
切れ目なしで続く第4楽章は、それまでに比べると生き生きした印象。
オーケストラとの絡みがおもしろくて、終わり方が派手なので、コンサートでは大きな拍手とスタンディングオベーションをいただけて良かったです。
ソリストは、文句なく素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
どんなに謎???な曲か興味がある方は、どうぞこちらの動画をご覧ください。
正直のところ、とにかく疲れました。。。
長い休みの後に、誰かが入る所を間違えたら崩壊間違いなしでしたので、みんな頭の中で必死で小節数を数えながらの演奏でした。
私ひとりは英語では間に合わないので、日本語で数えていました(笑)
参考までに、日本のヴァイオリニスト服部百音さんがこの曲を演奏した時の、彼女のメモを記しておきます。
【第1楽章】
おどろおどろしい始まりから、生と死の堺のような自分の意識を超えた、現世ではない世界を音で表現している。
【第2楽章】
痛快で滑稽なスケルツォの裏にはらむ狂気。ショスタコーヴィチが持つ表裏一体の性格が表れている。
【第3楽章】
嘆きの楽章。純粋な一粒の涙から始まり、それが懺悔となり、人を焦がれる気持ちとなり、自分の体が爆発しそうなほど心が張り裂けていく。
【第4楽章に向かうカデンツァ】
最後の肉体が抜け落ちる中で、意識だけが覚醒している。そこでは銃声や亡くなった人たちの声が聴こえる。やがて重力と相反するほどのエネルギーが肉体の中で逆流し、クライマックスのフォルテッシモに向かっていく。
コンサートの時間を短縮するために、休憩なしでチャイコフスキーの「交響曲第5番」に突入!
同じロシアの作曲家でも、チャイコフスキーは演奏していて何て気持ちがいいのでしょう♪
謎のエスニック料理を食べた後の、お口直しの美味しいデザートのようでした。
特に第4楽章の堂々とした出だしとエンディング・・・弾きながら「生きていて良かった!」と素直に思えました。
YouTube で色々な指揮者・オーケストラの「チャイ5」を聴き比べましたが、落ち着いたテンポで、各楽器の音色のバランスが良いなと感じたのがこちらです。
(あまりに速いと、一緒に弾けないという理由もあって・・・)
その時のブログ記事 ⇒ チャイコフスキーのおかげ
日本で私が所属していたオーケストラでも、今年の6月の定期演奏会でまたこの曲を演奏するそうで、何だか不思議な縁を感じます。
この世界情勢で、ロシアの作曲家の作品を演奏するってどうなの?という懸念もあったかもしれませんけれど、音楽は人類全体の宝ですものね。
どこかの国の作曲家を、特別に嫌ったり贔屓することがあってはならないと思います。
♪3月24日のコンサートプログラム♪ (予定していたもの)
Minnesota Lakes (Christopher Stanichar)
Violin Concerto No. 1 in A minor, Op.77 (Dmitri Shostakovich 1906-1975)
Ⅰ. Nocturne(夜想曲): Moderato
Ⅱ. Scherzo(スケルツォ): Allegro
Ⅲ. Passacaglia(パッサカリア): Andante - Cadenza
Ⅳ. Burlesque(ブルレスケ): Allegro con brio - Presto
Intermission
Symphony No.5 in E minor, Op.64 (Pyotr Illyich Tchaicovsky 1840-1893 )
Ⅰ. Andante - Allegro con anima - Motlo piú tranquillo
Ⅱ. Andante cantabile, con alcuna licenza
Ⅲ. Valse. Allegro moderato
Ⅲ. Valse. Allegro moderato
Ⅳ. Finale: Andante maestoso - Allegro vivace - Meno mosso
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