おまけのページ

2023/11/17

11月なのに、なぜか「海」特集

この前の日曜日、いつものオーケストラのコンサートに出演しました。
鹿狩りのシーズンにもかかわらず、お客様の入りは上々で良かったです。

毎回のコンサートにはテーマがあるのですが、今回は "Songs of the Sea" というタイトルで、演奏した4曲はどれもに関係のあるものでした。
というと「真夏」を思い出すので、11月のテーマだったのは不思議。

1曲目は、楽器でクジラの鳴き声や波などの動きを表現した、"And God Created Great Whales" という曲。
聖書「創世記」1章21節に表されているフレーズです。あの分厚い聖書の第1ページ目、天地創造の場面の一部なのです。

和訳の聖書では、この部分は「海の大いなる獣」とされ、英訳でも「クジラ」とは明記されず great sea creatures または great sea-monsters となっているものもあります。

曲の出だし部分などは、創世記の海のカオス状態を表すためなのか、弦楽器は周囲の人と同じ動きにならないように注意して、テンポもそれぞれ好きなように・・・と、楽譜に注意書きがありました。
下の動画を観ていただくと、皆さんバラバラの勝手な動きで弓を運んでいるのがよくわかりますね。

作曲者の Alan Hovhaness 氏は、日本韓国インドハワイなどの伝統音楽の要素を研究されたとのことで、この曲のメロディーにも、何だか懐かしさを感じました。
ちょっと「君が代」っぽいと思ったのは、私だけだろうな。




2曲目は、高校生の頃にこのオーケストラのメンバーでもあった Eric Haugen 君が主役のチェロコンチェルト


最初のリハーサルは、悪天候のためズームによるものになってしまったのですが、その時に作曲者の Max Wolpert 氏も参加でびっくり!

これは、チェリスト Eric 君と私たちのオーケストラのために書かれたできたてのホヤホヤの曲で、ネットには音源が全く載っていなくて、自宅練習に苦労しました。。。
そのズームリハーサルの後(コンサート本番の13日前)に音源が配られて、やっと雰囲気がつかめましたが。

タイトルの ”Leviathans" は、意味がわからなかったのでググりました。
ウィキペディアによると「旧約聖書に登場する海の生き物もしくは怪物。 その姿は伝統的には巨大なクジラ、魚、またはワニのような姿で描かれるが、後世には蛇や竜などの形でも描かれている」とのこと。

カタカナでは「レビヤタン」とか「レヴィアタン」などと表記されますが、英語ですと [ləvάɪəθ(ə)n] という発音記号で表されます。

作曲者の話では、幼い頃から海に憧れを抱いてきたけれど、内陸州に育ち、船酔いもするたちだったので、実際に海に行く代わりに海に関する物語を読むのが好きだったそう。
海に住むモンスター海賊難破船などについて想像しては楽しんでいたとのこと。
大きな海への恐れとワクワク感、冒険心の全てを表したものを作ろうと思い立ってできたのが、この曲だったそうです。

はい、その通りの曲でした!
時々、頭の中が???でいっぱいになりましたが(笑)、最後は光に満ちた大海原の上を高速で飛翔するような解放感を、私は味わいました♪
人によって印象が違うことでしょうけれどね。
チェロは、弾くのが難しいだろうかなりの高音まで、素晴らしい音を聴かせてくれました。


休憩後の1曲目は、ピアノの連弾と弦楽器だけの静かで美しいララバイ
発表直後は認められず、作曲者 Eric Whitacre 氏は、まだ赤ちゃんだったご自分の息子さんのためにだけ毎晩歌っていたそうです。
(眠ってくれる成功率は、50%以下だったそうですが・・・)

けれども数年後に合唱用に編曲され、それがきっかけとなって、コンサートバンド用にも編曲されて広く演奏されるようになったとのこと。

私は、戦地のガザウクライナの子供たちを思いながら演奏しました。
安らかな気持ちになるのはとても無理な状況でしょうけれど、少しでも慰めになりますように。



そして最後は、印象派の作曲家ドビュッシー Claude Debussy 交響詩『海』 (La Mer) でした。
1905年に出版された初版スコアの表紙は、何と葛飾北斎「神奈川沖波裏」の図柄で飾られています。
使われたのは左半分だけで、富士山は消されているけれどね。

北斎の絵からインスピレーションを得たのかどうかは定かでないようですが、もしそうだったら、何だか嬉しいですね。


ドビュッシーはフランス人でしたから、楽譜上の指示語もイタリア語ではなくフランス語で書かれていて、意味をいちいち調べなければなりませんでした。

『海』が書かれた頃、ドビュッシーの私生活は嵐の真っ只中だったそう。
彼と銀行家夫人との不倫が逃避行にまで発展し、奥さんがピストル自殺未遂をしでかしたのですって!
世間からバッシングを受け、親しかった友人も離れて行き・・・という状況だったとのことです。

(余談ですが、「月の光」など美しい曲の数々を作曲したドビュッシーは女癖については最悪で、売れない時代に彼を支えた女性も、ピストル自殺未遂を犯しています!)

『海』が発表された時、初めの頃は聴衆の反応はイマイチだったそうです。
初演の3年後にドビュッシー自らが指揮をして、やっと大成功をおさめることができ、めでたしめでたしとなりました。

練習を重ねるうちにどんどん好きになりましたが、初めの頃はやはり「何だか、ややこしい曲だな」という印象を私も受けました。
ドビュッシーらしい音の使い方で、実に見事に海の様子が表現されていますけれど、1回聴いただけでは、盛り上がりに欠けてつかみどころのない感じがします。

自宅練習では、色々なオーケストラ指揮者の YouTube を観て研究しました。
下のバーンスタイン指揮のものは、ちょっと古いですけれど、終わった時の客席の歓声がすごいので名演だったのでは?



そう言えば、しばらくを見ていないなあ・・・
ミネソタにはたくさんのがあり、水を見るとほっとしますけれど、潮風のにおいや波の音がとても懐かしいです。


♪11月12日のコンサートプログラム♪

     And God Created great Whales, Op. 229, No. 1 (Alan Hovhaness)
     
     Cello Concerto #1, "Leviathans" (Max Wolpert)
       Ⅰ. Iä! Iä!
       Ⅱ. Love Song at 52 Hz.
       Ⅲ. HIC SVNT DRACONES
 
           Intermission
       
     The Seal Lullaby (Eric Whitacre)

     La Mer (The Sea): Three Symphonic Sketches (『海』管弦楽のための3つの交響的素描)
      (Claude Debussy)
       Ⅰ. "De l'aube à midi sur la mer" – très lent – animez peu à peu
         (海上の夜明けから真昼まで)
       Ⅱ. "Jeux de vagues" – allegro (dans un rythme très souple) – animé(波の戯れ)
       Ⅲ. "Dialogue du vent et de la mer" – animé et tumultueux – cédez très légèrement
         (風と海との対話)

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